夢の終わりに

第 26 話


俺とスザク用の酒とつまみに昼食と夕食用の弁当とペットボトルのミネラルウオーターと紅茶などなど。あとはルルーシュが読みそうな新聞と、これからの旅用の非常食をいくつか。三人分だから買い物かごもあっという間にいっぱいになった。気付いたら籠の中には二日酔いの薬がいくつか入っていて、おいおいこれでルルーシュが嫌いとか本気かよと心の中で突っ込みを入れた。
まあ、よくよく聞けば原因は悪逆皇帝だった方のルルーシュで、今のルルーシュではないらしい。まあ、スザクはナイトオブゼロと同じ名前と、教科書にも載っている日本人・茶髪のくせ毛の緑の瞳というキーワードのせいで苦労したらしいから、黒髪紫目のルルーシュという名前も駄目だったのだろう。俺もその辺配慮すればよかったんだが、この顔でこの声ときたらもうルルーシュ意外呼び方がなかったのだから、許して欲しい。
ペットボトルなど重い物はスザクが、それ以外の軽い物は俺が持ち、コテージを目指す。こういう所でもスザクはさり気なく力仕事をしてくれる。俺みたいなおっさん相手にも気遣ってくれるのだ。だからまあ、スザクはお人よしだから、嫌いな相手でも体調崩した人間を放っておけないってのはあるのかもしれない。それに若いルルーシュの無謀な旅をただ心配しているだけかもしれない。・・・が、普段のこいつのルルーシュへの態度を見れば、どう考えてもお前はルルーシュのこと大好きだろうと言いたくなる。でも、俺の長年の経験から、あの嫌いと言った時の表情はてれ隠しとかの類ではなく本心だ。
だから結局あいつの考えはよく解らないのだが、一つ言えるのは嫌いな状態であの過保護っぷリを発揮し、ルルーシュにべったりなのだから、その嫌いが消えた時、もしかしたら俺はルルーシュ連れて逃げるぐらいの状況になるんじゃないだろうか?ってことだ。
おじさんはついやばい想像しちゃうんだよ、下手に長く生きてるから想像力だけは逞しくてな、普通の人間同士の話だから口出すべきじゃないのは解ってるけど、お前たちの事に関してだけは口出しするし、お節介を焼かせてもらうからな。
コテージに戻ると、カーテンを閉め切った暗い部屋の中でルルーシュは眠っていた。横に置いたペットボトルは半分ぐらい減っていて、まあ、水分取ったなら取り合えず様子見だよなと、酒とつまみと夕食を冷蔵庫に入れた。

「あ、スザク。ルルーシュは俺が見てるから、お前は外で食べたり遊んだりして来ていいんだぞ?」

買ってきてから気づく俺も馬鹿だなと思う。若い男なんだから、遊びたいだろうし綺麗なお姉ちゃんのいる店にだって行きたいだろう。それなのに、俺はついついスザクもルルーシュの看病をすると思い込んでしまった。

「別に行きたい所は無いよ」

スザクはぶっきらぼうに答えた。

「一応観光場所もあるんだし、飲食店もあるじゃん。ここでおっさんと弁当つつくよりいいんじゃね?バーだってあったぞ?」
「ねえリヴァル、僕をここから出して何する気?」

殺気の籠った言葉に、あ、やべ、勘違いされたと俺は冷や汗を流した。これの何処が嫌いなんだよ、どう考えても嫉妬丸出しの彼氏や旦那、あるいは娘を持った父親だろう。俺のルルーシュに何する気?って顔に書いてるよ怖いよ。

「何もしないって。ルルーシュはダウンしてるし、おじさんは若者ほど体力ないから、休める日は休みたいだけ。スザクは体力有り余ってんだろ?なら俺らに付き合ってここに引きこもる必要無いんじゃないかって話」

俺の説明を疑いの眼差しで見つめてくるスザクは、それでも嘘を言っていない事は理解したのか殺気は消してくれた。おー怖っ、ルルーシュが絡んだ時限定だけど、こいつ容赦なく殺気飛ばしてくるからなぁ、並みの人間なら腰抜かすぞまじで。

「別に観光には興味ないし、ご飯も空腹が満たせればそれでいいから」

こいつは食事にも周りの変化にもあまり興味は示さない。それは普段のスザクの目を見ればわかる。そのくせ何かのスイッチが入ると途端に童心に返ったようにはしゃぎ出すから、ホントよく解らないやつだ。今回のショーもそうで、最初は表面的に楽しんでる風を装ってたのに、気付いてたら子供のように熱中していた。感情の浮き沈みが激しいのかもしれない。

「そうか。まあテレビもあるし、ゲームもネットもできるからな。俺は一回休むから、何かあったら呼んでくれ」
「うん、解った」

こいつの相手で心底疲れた俺はいったん休むことにした。
これがなければホントいいやつなんだけどな。
起きた時にはその不機嫌な顔も眉間のしわも消えて、いつもの明るいスザクに戻ってくれてればいいんだが。
俺はため息一つついてからルルーシュの隣のベッドにもぐりこむ。
スザクはソファーに座りテレビをつけたらしく、ニュースキャスターの声が小さく聞こえてきた。

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